内分泌疾患専門病院
甲状腺・副甲状腺疾患、糖尿病などの生活習慣病

病理診断科とは【2】

病理診断科とは【2】

今回は,細胞診の検査についてお話しします。
(前回の記事「病理診断科とは【1】」)

甲状腺腫瘍の手術前(術前)の検査においては,穿刺吸引細胞診検査が行われます。超音波(エコー)検査で腫瘍の位置を確認しながら細い針を皮膚から刺し,注射器で腫瘍から吸い出した細胞を顕微鏡で観察するものです。
甲状腺のがん細胞はいくつかの種類(組織型といいます)に分けられますが,甲状腺がんの約90%を占めているのが甲状腺乳頭がんです。写真1に顕微鏡で甲状腺乳頭がんの細胞を観察したときの典型的な所見を示します。

写真1:腫瘍細胞の核は明るく,特徴的な核内細胞質封入体(赤矢印),核の溝(黒矢印)が見られます


ブドウの実のように青く染まっているのががん細胞の核の集まりです。その核の中がとても明るく透き通って見え,目玉焼きのように核の中に丸い構造物(赤矢印,核内細胞質封入体といいます)があり,コーヒー豆のように線がはいったような核の溝(黒矢印)などの特徴がみられます。
細胞診の検査によって,この腫瘍が甲状腺がんであることだけでなく乳頭がんであるということまで分類することができるのです。甲状腺乳頭がんを細胞診で正しく診断できる確率(正診率)は非常に高いことがわかっています。

写真2:迅速細胞診標本の作製風景


顕微鏡で観察するために,穿刺吸引された細胞の核と細胞質に色付け(染色)をします。染色には,一般にパパニコロウ染色法が用いられます。パパニコロウ染色法では,標本作製から診断結果をだすまでに少なくとも2〜3時間が必要となります。また顕微鏡の観察を外部の検査会社に依頼する場合は,さらに時間がかかり患者様への細胞診の診断結果の説明が翌日以降になってしまいます。
そこで野口病院では,細胞診の診断結果報告を迅速に行うために迅速細胞診を併用しています。写真2は,一度の穿刺吸引で得られた針の中にある細胞から,迅速細胞診用の染色とパパニコロウ染色用の2種類の標本を作製しているところです。通常のパパニコロウ染色標本に比べて迅速細胞診標本の染色性はやや劣りますが,数分で染色が完了し,10分以内に診断結果を報告することができます。ただ,採取された細胞数が少なすぎて診断できないなどの理由で2回目の穿刺が必要になることがあります。ときにパパニコロウ標本で行った診断と結果が異なることもありますが両者の一致率は95%以上であり,迅速細胞診は通常のパパニコロウ染色法に引けを取りません。このふたつの染色を併用することで,細胞診を含めたすべての検査結果を当日中にだせることになり,患者様は受診したその日に詳しい診断や治療方針の説明を受けることができるのです。検査に細胞診が含まれていても受診当日に今後の治療方針までを相談できる病院は全国的にもまれです。

(野口病院病理診断科)