内分泌疾患専門病院
甲状腺・副甲状腺疾患、糖尿病などの生活習慣病

甲状腺とヨウ素

ヨウ素とは?

ヨウ素は人間の生存や成長に欠かせないミネラルのひとつです。ヨードと呼ばれることもあり、海産物に多く含まれます。甲状腺はヨウ素を主な材料として、全身の代謝を調節する役割を果たす甲状腺ホルモンを合成します。

ヨウ素が含まれる食品は?

ヨウ素はさまざまな食品に含まれています。その中でもとくに海藻類に豊富で、例えば乾燥昆布には1gにつき2000μgのヨウ素が含まれています。ヨウ素の1日あたりの摂取推奨量が130μgであることを考えると、その豊富さがよくわかるかと思います。
ヨウ素の摂り過ぎや不足は甲状腺に大きな影響を与えます。
昆布を大量に食べるなどの特殊な食生活を続けると、ヨウ素の過剰摂取によって甲状腺機能が低下したり亢進したりすることがあります。わかめ入りのお味噌汁を飲んだり、ひじきの煮物を食べたりするなど、他の食品とバランスをとって1日に1回程度海藻を食べるのがちょうどよいと言えます。
一方で、日本人は日常の中で海藻を食べる機会が多いので、ヨウ素不足が問題となることはほとんどありません。

ヨウ素を多く含む食品
海藻類 海苔、昆布、ひじき、寒天、わかめ等
貝類 あさり、しじみ、かき、あわび、貝柱、貝のだし汁等
魚類 魚類とその加工品(蒲鉾、ちくわ、さつま揚げ、缶詰、干物、塩辛等)
肉類 内臓の部分(レバー、モツ、砂ずり、ホルモン等)
こんにゃく 海藻粉末入り、褐色、緑色
だし汁 にぼし、鰹節、昆布、いりこ、和風だし

見落とされがちな食品

ヨウ素を含む食品として見落とされがちなもののひとつに、増粘安定剤カラギナンがあります。カラギナンは海藻由来の食品添加物で、食品の粘度を上げる目的で使用されます。ゼリーやヨーグルト、グミ、豆乳、アイスクリーム、パン、ドレッシングなどによく使われていて、増粘剤、増粘多糖類、安定剤、ゲル化剤などと表記されることがあります。

甲状腺の治療とヨウ素

甲状腺にはヨウ素を取り込むという特性があります。この特性を活かして甲状腺の病気の検査や治療に「放射性ヨウ素」が使われます。放射性ヨウ素は核分裂反応で生成されるヨウ素の同位体で、放射能を持つヨウ素です。
放射性ヨウ素を用いた治療法のひとつに「放射性ヨウ素内用療法」というものがあり、この治療を行う前には一定期間ヨウ素をできるだけ摂らないように制限をします。体内のヨウ素量を極限まで減らすことで放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれやすくなり、治療効果が高まります。
また、バセドウ病に対する治療としてヨウ素を含んだ薬を長期に投与することもあります。
甲状腺の病気の治療では、病状によってヨウ素を制限したり、逆に投与したりすることがあり、ヨウ素が深く関わっています。
治療のためにヨウ素制限が必要だと言われた方は、当院の管理栄養士が詳しく説明を行います。また、ヨウ素制限食メニューのレシピを掲載していますので、是非ご活用ください。

(参考)
日本人の食事摂取基準2020年版(厚生労働省)
日本食品標準成分表2020年版(八訂)(文部科学省)

(野口病院栄養科管理栄養士)