妊娠8〜12週頃に一時的に甲状腺機能が亢進することがあります。胎盤がつくるhCGというホルモンによって甲状腺が刺激されるためと考えられています。もともと甲状腺には全く異常がない人にも、つわりが強い時に発症します。一時的な機能異常ですので時期がくれば治まりますが、機能亢進の程度が強い時は無機ヨウ素による治療が勧められます。
妊娠中は母体の甲状腺機能を正常にコントロールしておくべきです。母体血中のTSHが正常になる量の甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン、チラージンS)の内服は胎児に悪影響を与えません。妊娠週数が進むと薬の必要量が増えますので定期的に検査をして薬の量を調整することが必要です。なお、甲状腺ホルモン剤は授乳中にも内服できます。
甲状腺ホルモンは子供の成長、特に神経や骨の発育に不可欠のホルモンです。日本ではすべての新生児について甲状腺機能低下症をスクリーニングしています。新生児の甲状腺機能低下症が診断された場合はなるべく早く甲状腺ホルモン剤の内服を始めます。適切に治療すれば子供の成長に悪影響を残しません。