日本では甲状腺中毒症(血液中の甲状腺ホルモンが増える疾患)の多くがバセドウ病によるものです。他にも甲状腺中毒症を起こす疾患がありますので、これらとバセドウ病とを区別しなければなりません。治療法が異なるからです。甲状腺ホルモン値が高いというだけでバセドウ病と診断すると治療を誤ることがあります。
昔から知られているバセドウ病の三大症状は甲状腺腫(甲状腺の腫れ)、動悸、眼球突出です。しかし甲状腺の腫れがそれ程目立たない場合もあります。動悸は甲状腺ホルモンが多くなるための症状ですが、他に多汗、体重減少、暑がり、下痢、手の震え、不眠、いらいら、倦怠感などの症状もよくみられます。眼球突出に代表される眼の症状はバセドウ病に特徴的なものです。バセドウ病以外の原因による甲状腺中毒症には見られない徴候です。
バセドウ病に合併することのある疾患としては心房細動、心不全、皮膚の白斑、周期性四肢麻痺、脱毛、脛骨前粘液水腫、1型糖尿病などが挙げられます。
バセドウ病を治療しないで放置すると全身に甲状腺機能亢進症の影響が蓄積されてきます。低栄養状態に陥り、心房細動から心不全を起こしたり、黄疸を伴うような肝臓の異常をきたしたりすることもあります。バセドウ病がきちんと治療されていない場合には妊娠にも影響しますし、抜歯などの小手術さえ安全に受けることができません。感染などのストレスが加わったときにバセドウ病の症状が一気に悪化することがあります。しかし、適切に治療すればバセドウ病はよくなります。
血液中の甲状腺ホルモン値(Free T3, Free T4)が高く、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が抑制されていることを確認します。特徴的な眼所見がある場合にはバセドウ病と診断されます。抗TSH受容体抗体(TRAb)が陽性であればバセドウ病と診断してほぼ間違いありませんが、バセドウ病でもTRAbが陰性の場合があります。放射性ヨウ素摂取率が低くないことが確認できれば確実にバセドウ病と診断できます。超音波検査で甲状腺の大きさと腫瘍を合併していないかどうかを見ておきます。血液検査、胸部レントゲン、心電図などで甲状腺機能亢進症の全身への影響を調べます。