内分泌疾患専門病院
甲状腺・副甲状腺疾患、糖尿病などの生活習慣病 Facebookページへ Twitterへ

甲状腺について

甲状腺・甲状腺ホルモンについて

 甲状腺は頚の“のど仏”のすぐ下にある小さな臓器の名前です。全身の代謝の状態を調節し、小児には成長を促すために必須のホルモンであるサイロキシン(T4)を作って分泌しています。サイロキシンは血液に乗って全身を循環する途中でトリヨードサイロニン(T3)に変換されます。サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)を併せて甲状腺ホルモンと呼びます。甲状腺はヨウ素とチロシンというアミノ酸を材料に1日に約90μgのサイロキシンを分泌します。成人では1日に必要なヨウ素は約150μgです。甲状腺の働きは頭の中にある下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。

 甲状腺の疾患には甲状腺ホルモンの過不足をきたす疾患と、ホルモンの値には影響しない疾患とがあります。血液中の甲状腺ホルモンが増えてその作用が過剰になることを甲状腺中毒症といいます。甲状腺中毒症をきたす疾患には、バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎などがあります。逆に甲状腺ホルモンが不足した状態を甲状腺機能低下症といいます。甲状腺機能低下症は慢性甲状腺炎や甲状腺の手術後、放射性ヨウ素治療後にみられます。

 甲状腺のしこり(結節、腫瘍)や慢性甲状腺炎の大部分の患者さんでは血液中の甲状腺ホルモン値には異常がみられません。

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甲状腺機能亢進症と甲状腺中毒症

甲状腺機能亢進症、甲状腺中毒症とは

 甲状腺中毒症とは何らかの理由で血液中の甲状腺ホルモンが過剰になった状態をすべて含みます。この中で甲状腺がホルモンを作りすぎている場合(ヨウ素摂取率が亢進している場合)を甲状腺機能亢進症といいます。甲状腺機能亢進症をきたす疾患にはバセドウ病、過機能性結節などがあります。これら以外で甲状腺中毒症を起こす疾患には無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎などがあります。日本では甲状腺中毒症の原因の多くがバセドウ病です。

甲状腺機能亢進症と甲状腺中毒症の症状・徴候

 原因が何であれ甲状腺ホルモンの作用が過剰になると、いろいろな症状が出ます。よくみられる症状は易疲労(疲れやすい)、体重減少、暑がり、多汗、動悸、息切れ、振戦(ふるえ)、下痢、いらいら、筋力低下、過少月経などですが、年齢によって症状の現れ方が違ってきます。例えばご高齢の方では食欲がなくなってやせることが多いのですが、若い人では食欲が亢進して体重が増える場合があります。心房細動という不整脈もご高齢の方に出やすい症状です。

甲状腺機能亢進症、甲状腺中毒症の診断と治療

 甲状腺中毒症(甲状腺機能亢進症)は血液中の甲状腺ホルモン値(Free T3, Free T4)を測定することで容易に診断されます。甲状腺自体に原因がある場合はTSHが抑制されますので、この確認も重要です。原因を診断するためには抗TSH受容体抗体(TRAb)や放射性ヨウ素摂取率を検査します。治療は原因によって異なりますので、それぞれの疾患のページを参照してください。

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甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症とは

 甲状腺ホルモンが不足している状態をいいます。ほとんどは甲状腺に原因がありますが、稀に下垂体の異常が原因のことがあります。甲状腺、下垂体どちらに原因があるかは血液検査でわかります。甲状腺に原因がある場合、永続性の機能低下症と一過性(一時的なもので自然に治る)機能低下症があります。永続性機能低下症の原因は慢性甲状腺炎、腫瘍やバセドウ病のための甲状腺手術、バセドウ病に対する放射性ヨウ素治療などがあります。一過性のものは無痛性甲状腺炎・亜急性甲状腺炎の回復期、産後の甲状腺機能異常症、ヨウ素過剰摂取によるものなどがあります。

甲状腺機能低下症の症状・徴候

 自覚症状としては、寒がり、むくみや体重増加、便秘、月経過多、脱毛、眠気、倦怠感などがあります。診察所見としては、除脈、皮膚の乾燥、顔のむくみを認めます。甲状腺は腫れていることもありますし、萎縮して触れないこともあります。一般的な血液検査ではコレステロールの増加、貧血、CPKの上昇、また肝機能異常を認めることがあります。

甲状腺機能低下症の診断と治療

 甲状腺ホルモン値(Free T3, Free T4)とTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定して、Free T3, Free T4が低いことを確認します。TSHが高ければ甲状腺に原因があります。TSHが高くない時は下垂体の検査をします。甲状腺機能の低下が一過性であることがわかれば、よほど症状が強くない限りは治療の必要はありません。永続性の場合は足りない甲状腺ホルモンを内服薬で補います。これを補充療法といいます。生理的に必要な甲状腺ホルモン(サイロキシン、T4)は1日あたり約90μgですが、補充に必要な薬の量は人によって異なります。残った甲状腺のホルモン産生能や体重で薬の必要量が決まります。補充療法には、チラーヂンS錠かレボチロキシン錠を用います。1錠にサイロキシンをどれだけ含むかによって5種類(12.5μg 、25μg、50μg、75μg、100μg)の規格があります。薬の量を間違えなければ副作用の心配はまずありません。毎日忘れずに決まった量を内服してください。

 長い間甲状腺機能低下症が持続していた可能性がある場合は、最初は25μg程度の少ない量から始めて数週間おきに少しずつ増量します。特に狭心症や不整脈など心臓の病気がある場合は徐々に増量します。血液中のTSHの値を指標に内服する薬の量を決めていきます。一旦薬の適量が決まれば、普通は長い間その量で安定した効果が続きます。数日であれば薬を飲まなくても効果が途切れることはありませんが、なるべく毎日忘れないようにしましょう。

 一過性の甲状腺機能低下症の場合は、漫然と甲状腺ホルモン剤の内服を長く続ける必要はありません。薬を続ける必要がある場合も、内服する薬が足りないと症状の改善が思わしくなかったり、コレステロール値が高いままであったりします。逆に内服する薬が多すぎる場合は、狭心症や不整脈を誘発する可能性があります。骨粗鬆症を悪くさせる可能性もあります。

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