内分泌疾患専門病院
甲状腺・副甲状腺疾患、糖尿病などの生活習慣病 Facebookページへ Twitterへ

バセドウ病の薬物治療

バセドウ病の薬物治療

 バセドウ病の治療法には薬物治療と手術、放射性ヨウ素治療の三とおりの方法がありますが、診断が確定すればまず薬物治療が始まります。薬物治療で治る見込みが少ない場合や薬のアレルギーなどのために薬物治療を続けられない場合などは手術や放射性ヨウ素治療について検討します。年齢、甲状腺の大きさ、甲状腺腫瘍合併の有無、バセドウ病による眼症状の有無、その他の合併疾患の有無など色々な条件を考慮して手術と放射性ヨウ素治療のどちらがより良いかを判断します。手術や放射性ヨウ素治療を受ける場合も治療の前に薬物治療でホルモン値を下げておく必要があります。薬物治療で治る見込みがある場合は、薬のアレルギーに注意しながら薬物治療を続けます。

バセドウ病の初期治療

 バセドウ病は甲状腺が腫れて甲状腺ホルモンの合成と分泌が増える疾患(甲状腺機能亢進症)です。診断されたら、まずチアマゾール(メルカゾール)という薬で増えすぎた甲状腺ホルモンを抑える治療を始めます。この薬は甲状腺でホルモンが作られるのを阻害します。初めは1日3錠から始めることが多く、血液中の甲状腺ホルモン値が正常化すれば1日1〜2錠に減量します。薬が充分に効いてホルモン値が正常になるまでには4〜6週間以上かかります。それまでは安静をこころがけてください。激しい運動や肉体労働、暑い環境での作業などは避けるべきです。飲酒や喫煙もよくありません。ホルモン値が下がるまでの期間、症状を緩和するためにベータ遮断薬(インデラル、テノーミンなど)を併用することがあります。薬の治療は薬でホルモンが増えないように抑えているだけですので、最初のうちは症状がとれたからと言ってすぐ薬を止めると簡単に治療前の状態に逆戻りします。

甲状腺機能が正常化してからの薬物治療

 初期の薬物治療で甲状腺ホルモン値が正常化すれば薬の量が減ります。ホルモンを正常に保てる最小限の薬を続けることになります。薬物治療だけでバセドウ病を治療する場合、2〜3年程度は薬を続けることになります。薬を続けている限りは1〜3月毎に通院して血液検査を受けなければいけません。薬に対するアレルギーを常に心配しておく必要があります。長期間の内服治療により一部の人では薬を止めてもホルモンが増えない状態になりますが、長い期間治療しても薬が止められないこともあります。薬の治療を始める前や治療中の所見から薬の治療で治るかどうかある程度予測することができます。例えば甲状腺が大きい場合や抗TSH受容体抗体(TRAb)の値が低下しない場合などは薬物治療で治る可能性が低いことが知られています。

 最小限の薬の量で半年以上甲状腺機能が正常に安定しており、甲状腺腫が小さく、TRAbが高くない場合には薬を止めてみます。2〜3年の薬物治療の後でこの条件を満たしている場合には約8〜9割の人では薬を止めた後も甲状腺ホルモン値は正常を維持できます。

薬のアレルギー

 チアマゾール(メルカゾール)によって起こりうるアレルギー反応としては蕁麻疹などの皮膚症状、肝機能障害、白血球減少などがあります。これらのアレルギー症状は約3〜8%以下の頻度でみられると報告されています。最も重篤なアレルギー症状は無顆粒球症といって白血球の中の顆粒球という細胞が500/mm3以下に減ることです。これは約0.2〜0.5%の頻度で発症します。無顆粒球症では突然高熱が出て扁桃腺の痛みが起こります。このような症状がある場合はチアマゾール(メルカゾール)を中止してただちに病院に連絡をください。薬に対するアレルギー反応は治療を始めて最初の3月間、特に2〜3週目頃に最も起こりやすいのですが、それ以降にも起こることがあります。

チアマゾール以外の薬

 チアマゾール以外の薬にプロピルチオウラシル(チウラジール・プロパジール)がありますが、これは妊娠初期・授乳中、またはアレルギーのためにチアマゾール(メルカゾール)が使えないときに限って使う薬です。

▲このページのトップへ