前回に引き続き、今回はCT検査についてご説明します。 CT検査時の服装については、こちらに記載されています。 CT検査(シーティーけんさ) Computed Tomography:コンピュータ断層撮影 CT装置の大きな輪の中に身体を入れて、身体のいろいろな断面を画像にする検査です。 CT検査の様子 CT検査では、X線(放射線の一種)を使います。検査したい部位にX線を当てて、体のX線の吸収率(体を通り抜ける量)の違いをコンピュータで処理をして画像を作り出します。 X線検査(レントゲン検査)は通常一方向からX線を当てて画像を得るのに対し、CT検査では多方向からX線を当てます。臓器が重なっている部分など、X線検査(レントゲン検査)では詳しく見ることができない部位の状態をCT検査では知ることができます。コンピュータで画像処理をすることで、身体のいろいろな断面画像を作ることができます。 また、画像の濃度など条件を変えることによって、より詳しく診断することが可能です。 矢状面(正中面):身体を左右に分ける断面(正中面は左右を半分に分ける面) 冠状面:身体を前後に切る面で、矢状面に垂直な面 水平面:直立した場合に地面と平行な面で、矢状面と冠状面に直行する面 CT画像の例 頚部CT水平断 胸部CT冠状断(縦隔条件) 胸部CT冠状断(肺野条件) 放射線を使用する検査・診断・治療などの医療によって被ばくすることを「医療被ばく」と言います。CT検査では被ばくを伴いますが、CT検査の必要性が被ばくのリスクを上回ると考えられる場合に検査を行っています。また、放射線安全利用についての法令や関連学会のガイドラインをもとに適切な条件で、被ばくをできる限り少なく抑えるよう最適化に努めております。 いろいろな分野で用いられるX線CT 「対象物を破壊することなく、形状や内部構造の詳細な情報を得ることができる」というX線CTの利点を活かして、医療以外にも①産業 ②考古学や古生物学の研究 ③文化財の研究 など、様々な分野でX線CTが利用されているようです。 (野口病院放射線科医師 中島亜紀子)
X線(レントゲン)検査やCT検査,MRI検査などの画像検査を受ける前に,「着替え」をお願いすることがあります。どういった服装のときに着替えていただくことになるのか,なぜ着替えが必要になるのかは,受ける検査によって異なります。前回の内容に引き続き今回はCT検査について説明します。 CT検査の注意事項 CT検査では体の周囲からX線をあてることにより体の中をX線が通過するのですが,組織や臓器により通過のしやすさに差が生じます。その差をデータとして集め,コンピュータで処理することで体の断面を画像にします。 撮影部位に金属類がついた状態で撮影を行うとアーチファクトと呼ばれる障害陰影が画像上に現れてしまい,診断の妨げになってしまいます。そのため頭・頚部の検査ではヘアピン,ピアス,義歯などははずしていただきます。また,胸部や腹部等の検査ではブラジャーやファスナー,チャックなどが撮影時に写り込まないよう検査着に着替えてからの検査を推奨しています。 金属類がついていてもCT検査の撮影範囲外でしたら検査着に着替えずそのまま撮影が可能です。 図1. 金属によってアーチファクトが写り込んでいるCT画像の例 図2. 心電図電極パッドによりアーチファクトが写り込んでいるCT画像の例 金属類の周りに黒い帯状の筋のように見えるものが金属アーチファクトです。図2では黄色い矢印で挟まれた部分(→ ←)に現れています。 野口病院では検査着の貸し出しと男女別更衣室がありますので,着替えが必要な場合にはご協力をお願いいたします。 (野口病院放射線科診療放射線技師)
もっと知りたい採血のこと!(3) 当院の外来採血は検査を専門に担当している臨床検査技師が行っています。採血した血液をどのようにして検査しているか,結果がでるまでなぜ1時間かかるのか,採血の際に患者さんからよく尋ねられる質問にお答えします。 なぜ何本も血液をとるのですか? 採血管にはたくさんの種類があり,血液が固まるのを抑える薬や逆に固まりやすくする薬が入っています。それらを検査の項目(種類)によって使い分けるため,複数の採血管が必要になります。 1本の採血管で2~5mL程度の血液が採取されます。1回の採血でとる血液量は多くとも15~20mL(大さじ1杯程度)です。 採血した血液を振っているのはなぜですか? 採血管の中に入っている薬剤と血液を速やかに混ぜるためです。採血管の薬剤と血液がよく混ざっていないと正しい検査を行うことができず,再採血をお願いすることがあります。採血担当者が採血管をしきりに振ったりするのを気ぜわしく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが,必要なことですのでご理解をおねがいします。 採血時,採血管の中に血液が吸い込まれていくのはなぜですか? 針を刺して採血管を押し込むと血液が勝手に入ってきます。これは採血管の中を陰圧(気圧が低い状態)にして最適な量で止まるように調整されているからです。また採血管の中には血液量に合った量の薬剤が入っているため,決められた血液量をきちんと採取することは正しい結果を出すためにとても大切です。 採血した血液はどのように調べられますか? 採血した血液は検査項目に合わせて処理します。貧血を調べる検査やヘモグロビンA1Cなど血液中の血球部分を検査する項目では血液をそのまま検査しますが,ホルモンや脂質,血糖など多くの検査に使用するのは血液の黄色透明な液体部分です。血液からこの液体部分を取り出す前処理を行ったあと,複数の分析装置で測定します。 検査結果が出るまでにどれくらいの時間がかかりますか? 院内で検査する項目の場合は,採血から約1時間で診察に必要な検査結果がすべてそろいます。まず検査を行うための前処理に20~30分ほどかかります。そこから,分析装置を用いた測定に(検査項目によって異なりますが)最長で30分ほどが必要です。あわせると1時間程度かかります。 ただ予期しない結果がでたりすると,再測定のために余分な時間がかかることも 続きを読む >>
薬の効果を十分に得るためには,指示されたタイミング,量,回数を守って正しく服用する必要があります。 薬を飲むタイミングは? 服薬のタイミングは,薬袋に書いてありますのでよくご確認ください。 薬は,それぞれ決められたタイミングで飲まないと効果がなかったり,副作用を生じたりします。必ず決められたタイミングで服用しましょう。 起床時 朝起きて,まだ何も食べていないとき 食前 食事の30分くらい前 食直前 食事の直前 食後 食事の後30分以内 特に指示がない限り,食事のすぐ後に服用しても構いません 食間 食事を終えてから2時間ほど後の空腹時 食事と食事の間のことで,食事の最中のことではありません 眠前 寝る直前または20-30分前 睡眠薬は,寝る準備をしてお布団に入る直前にお飲みください 頓服(とんぷく) その症状が出たとき(解熱剤や咳止めなど) ◆例えば… ・ボナロン錠35mg 週に1回,朝起床時に服用する骨粗鬆症の薬です。 ボナロンは消化管からの吸収が極めて悪く,食事と同時に服用すると吸収が低下してしまうことから, 消化管の中に全く何もない時間である起床時が効果的とされています ・ボグリボース,ミグリトール等のα‐グルコシダーゼ阻害薬(α‐GI) 食直前に服用する糖尿病の薬です。 α-GIは糖質の消化・吸収を遅延させることで,食後の急激な血糖の上昇を抑えます。この薬がきちんと作用するためには,食物と薬が一緒に消化管の中にあることが必要であるため,食直前の服用が必須となります。 当院でお渡しする薬のなかには,「食前」「食後」など服用のタイミングを指定していないものもあります。この場合,食前食後どちらで飲んでも構いません。毎日継続して服薬することが第一に大切ですので,ご自身でタイミングを決めて,服薬を習慣づけましょう。 薬を飲み忘れたときは? 指定されたタイミングで薬を飲み忘れたからといって,次の服用の際に2回分をまとめて服用することは決してしないでください。薬によって,気付いたときにすぐ服用した方がよいもの,忘れた分は服用せずその回は飛ばした方がよいものなどがあります。ご自身で判断せず処方元の医療機関にお問い合わせください。 薬の飲み方は? 錠剤や散剤などの飲み薬は,原則としてコップ1杯程度(約200ml)の水,またはぬるま湯でのみましょう。 薬によっては 続きを読む >>
頸部エコー検査の観察範囲 頸部エコー検査で観察する範囲は甲状腺や副甲状腺だけでなく,上は唾液腺から下は鎖骨辺りまで,左右は総頸動脈とその外側のリンパ節なども観察しています。その他,患者様の首の気になるところや痛みを伴うところがあれば,検査時に技師へお伝えください。あわせて観察していきます。 以上のことから患者様によって検査の所要時間が異なります。 頸部エコー検査時の姿勢 ベッドに横たわって検査を行う施設もありますが,当院では理髪店にある理容椅子(バーバーイス)に座っていただいて検査を行います。 甲状腺は首の前面に張り付くように存在しており,上の図は女性の甲状腺の位置ですが,男性の甲状腺は鎖骨に近くやや下方に位置しています。男女に限らず鎖骨の奥まで観察するため首を伸展していただいて検査を行います。 耳の近くから鎖骨のあたりまで観察するため,えりの詰まった服(ハイネックやタートル,パーカー等)の着用は避けていただくと検査がスムースに行えます。ただ,ハイネック等着用していても脱いでいただければ検査は行えます。 検査時の緊張や苦痛を和らげる工夫 エコー検査を受ける方はみなさま緊張なさるかもしれません。少しでも緊張を和らげるために超音波検査室内に音楽を流していますのでリラックスして検査を受けていただけます。また腰や首が痛いなど検査の姿勢がつらい場合は申し出ていただけると,枕やクッションを使って少しでも楽な姿勢で検査を受けることができます。 観察部位にエコーゼリーをつけて検査します 検査時は首にエコーゼリーをつけますが,これは超音波の伝わりをよくするためのものです。超音波プローブ(超音波発信機)と皮膚の間に空気があると超音波が伝わりにくいためエコーゼリーで隙間を埋めて,かつ動きをスムースにするために必要なものです。 エコーゼリーは体に害はありません。検査終了後に首を拭くためのおしぼりを差し上げています。 (野口病院検査科臨床検査技師)
病理診断科とは【4】 前回の術中迅速病理診断に引き続き,今回は「手術標本病理組織診断」についてご紹介します。 手術標本病理組織診断は,手術で摘出された臓器などを顕微鏡で観察して行われる診断です。 例えば甲状腺腫瘍の手術では,術前の超音波検査などの画像診断と穿刺吸引細胞診の結果から得られた診断のもとに腫瘍を切除します。切除された腫瘍を顕微鏡で観察して悪性(がん)か良性か,悪性であればどのような種類(これを組織型といいます)のがんで,どこまで拡がっているか,手術で取り切れているかどうかなどを調べます。 顕微鏡観察用の標本は,病理検査担当の臨床検査技師によって作られます。病理標本の作製は工程が多く作業が煩雑であるため,一定の技術が必要です。 作成された標本を病理専門医が顕微鏡で観察し,がんであればその組織型,大きさ,甲状腺周囲組織への拡がりやリンパ節転移の有無を記載した病理組織診断結果の報告をします。当院では特殊な例を除き,手術の2~4日後には病理報告書が作成されます。標本作製と病理診断の確定には時間がかかるのでこれ以上の迅速化は困難ですが,少なくとも退院前には最終的な病理診断が主治医に報告され,それをもとにその後の方針を相談することができます。病理診断は,術後経過の予測や今後の治療方針を決める重要な検査です。 顕微鏡観察用のプレパラートとその顕微鏡写真(甲状腺乳頭がん) 組織標本は保存性が良いため,数十年前のものでも当時とほぼ同じ状態のまま顕微鏡で観察することができます。甲状腺がんは手術後十年以上が経過してから再発することもあります。がんが再発したときに過去の標本と比較をしたり,また手術当時には詳細不明であってもその後に診断や治療法が進歩した疾患については,遡って検証したりすることも可能となります。 標本室には1938年以降の全ての病理標本が保管されています (野口病院病理診断科)
野口病院旧管理棟 野口病院旧管理棟は,1922年初代院長の野口雄三郎が野口病院を開設する際に建築された建物で,1970年までは本館として用いられていました。1986年に建築当時と同じ工法・材料を用いて修復がなされ,その後2013年に青山町へ移転するまでは管理棟として使用されてきました。 開設当時の野口病院(1922年頃)と現在の姿(2023年) とんがり帽子の赤い屋根をシンボルとしたシックな外観を特徴とするこの建物は,1996年に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。 登録有形文化財(建造物)の登録基準は,「建設後50年を経過している」もので,かつ「国土の歴史的景観に寄与している」「造形の規範となっている」「再現することが容易でない」という三つの条件のうち,いずれかに当てはまるものとされています。登録物件には都道府県ごとに通し番号が振られ,番号を記したプレートが文化庁から授与されます。 文化庁が運営する文化遺産オンラインでは,野口病院(旧)管理棟について次のように解説されています。 東側に尖塔屋根を軸とする左右対称のファサードを持ち,背面に2列に棟が伸び,中庭を囲む構成をとる。グレーのモルタルススペイン壁の上部に白漆喰のハーフティンバーがのる外壁に特徴があり,まちなみ景観のシンボルとして親しまれている。 ファサード:建物を正面から見たときの外観のことで,フランス語に由来する ハーフティンバー:柱や梁(はり)などの骨組みを外にむき出しにし,その間に煉瓦や土,石を壁とする西洋木造建築の様式 スペイン壁:外壁の塗装方法「スタッコ仕上げ」のことで,石灰と水,セメント,砂などを混ぜてドロっとした状態でモルタル外壁に塗り上げる 現在は内部に入ることはできませんが,外観を見学していただくことは可能です。 前述した登録有形文化財のプレートは建物の東側に掲出していますので,建物を見学される際にご覧になってみてください。 別府市内には他にも近代化遺産がたくさん保存されており,この野口病院旧管理棟は別府市公式観光情報Webサイト別府たびで観光スポットのひとつとして紹介されています。 建設中の野口病院(1921-22年頃) 玄関横で撮影された写真(矢印の人物が初代院長野口雄三郎) (野口病院広報委員会)
野口病院のカルテ 診療記録管理室の主な役割と言っていいのが,カルテ(診療録)の管理です。 医療機関におけるカルテの法的な保管義務期間は5年とされています。しかしながら,当院では院内の管理規定でカルテの保存期間を永久保存としており,2004年に電子カルテに移行する以前の紙カルテも含めて,大正11年(1922年)7月の創立当時からの全てのカルテを保管しています。 製本したカルテも合わせると,その数は数十万冊にも及びます。 古いカルテはいろは順で製本し,整理されている 診療記録管理室では,日々の業務の中で古い紙カルテを手に取ることがよくありますが,患者様のカルテを拝見するたびに野口病院の長い歴史を感じます。 古いカルテを開いてみると,B5サイズの和紙にドイツ語の単語が印刷されており,カタカナ表記の文書や,現在ではあまり使われなくなった筆記体で,患者様の訴えや病状,検査の結果が記録されています。なかには記録用紙や添付する検査の結果等が増え,分厚い辞典のようになっているカルテもたくさんあります。 カルテは患者様お一人おひとりの診療の記録ですが,医学的な史料でもあり,野口病院の長い診療の記録でもあるのです。 大正15年のカルテ 今日あたりまえに普及したインターネットのような通信技術もなく,また今ほど十分な医療設備も揃っていない時代から始まって一世紀あまり。病気の回復を願い治療を続けてこられた患者様と,診断や治療法の向上に取り組んできた医師や医療従事者達に思いを馳せながら日々業務に励んでいます。 (野口病院診療記録管理室)
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