内分泌疾患専門病院
甲状腺・副甲状腺疾患、糖尿病などの生活習慣病

バセドウ病の治療法について

バセドウ病の初期治療

バセドウ病は甲状腺が腫れて血液中の甲状腺ホルモンが増える疾患(甲状腺機能亢進症)です。診断がつけばまず薬(メルカゾール、チウラジール、プロパジール)で増えた甲状腺ホルモンを抑える治療を始めます。これらの薬は主に甲状腺でホルモンが作られるのを阻害します。初めは1日3〜6錠から始めることが多く、血液中の甲状腺ホルモン値が正常化すれば1日1〜3錠に減量してその量をしばらく続けることになります。薬の治療は薬でホルモンが増えないように抑えているだけですので、最初のうちは症状がとれたからと言ってすぐ薬を止めると簡単に治療前の状態に逆戻りします。

バセドウ病の薬物治療

薬だけでバセドウ病を治そうとすれば通常は3〜5年程度は薬を続けることになります。薬を続けている限りは1〜3月毎に通院して血液検査を受けなければいけません。薬に対するアレルギーも常に心配しておく必要があります。長期間の内服治療により一部の人では薬を止めてもホルモンが増えない状態になりますが、永い期間治療しても結局いつになっても薬が止められないこともよくあります。

じつは薬の治療を始める前や治療中の所見から薬の治療で治るかどうかある程度予測することができます。例えば甲状腺が大きい場合やTSH受容体抗体(TBII)の値が高い場合などは薬物治療で治ってしまう可能性が低いことが知られています。薬物治療を始める前のTBIIの値がおよそ15以下の場合は薬物治療で治る確率は65〜75%です。TBII値が36程度だと治る確率は半々、TBII値が66程度なら治る確率は約30%と見込まれます。薬物治療で治る可能性が低いと思われる場合はいつまでも薬物治療にこだわるのは得策でないかも知れません。薬に対するアレルギーのために薬物治療をつづけられない場合も他の治療法を選ばねばなりません。

メルカゾール、チウラジール、プロパジールによって起こりうるアレルギー反応としては蕁麻疹などの皮膚症状、肝機能障害、白血球減少などがあります。これらのアレルギー症状は約3〜8%の頻度でみられると報告されています。なかでも最も重篤なアレルギー症状は無顆粒球症といって白血球の中の顆粒球という細胞が500/mm3以下に減ることです。これは約0.2〜0.5%の頻度で発症します。無顆粒球症では突然高熱が出て扁桃腺の痛みが起こります。このような症状がある場合はバセドウ病の薬を中止してただちに主治医に連絡してください。

バセドウ病の他の治療法

薬以外の治療法には手術と放射線治療のふたとおりの方法があります。薬の治療で思うようにいかない場合はこれらの方法について検討します。年齢、甲状腺の大きさ、甲状腺腫瘍合併の有無、バセドウ病による眼症状の有無、その他の合併疾患の有無など色々な条件を考慮して手術と放射線治療のどちらがより良いかを判断します。

バセドウ病の手術による治療

全身麻酔下に甲状腺の一部(およそ5分の1)を残して大部分の甲状腺を切除します。甲状腺亜全摘術といいます。入院期間は普通は2週間以内です。手術直後の数ヶ月から約1年までは甲状腺機能が低下気味に経過しますが、その時期を過ぎれば90%近くの人は薬なしで甲状腺機能正常の状態になります。別の約5〜6%の人は甲状腺機能低下症になり、約6〜7%の人ではバセドウ病が再発することもあります。手術直後に約2〜3%の頻度で声がかすれることがあります。しかし、ほとんどは半年以内に治ります。なかには高い声が出なくなることもあります。また7〜8%の人で手術直後に血液中のカルシウムが減り手足のしびれが起こることがあります。これも短期間の薬物治療で治ることがほとんどです。また術後出血による再手術が約1.5〜2%の頻度で必要になります。頚部に手術の傷が残りますが傷がなるべくきれいになるような手当を術後に続けます。

手術治療の良い点は早く高い確率でバセドウ病を治せることです。ただし、これはバセドウ病の手術に習熟した外科医が手術した場合の話です。

バセドウ病の放射線治療

放射性ヨード(アイソトープ)のカプセルを内服します。内服した薬は胃腸で吸収されて甲状腺に集まってきます。そこで甲状腺の中から放射線を出して甲状腺の細胞を潰してくれます。カプセル内服の前後合わせて約2週間は食事の中にヨードを含むものが入らないようにヨード制限をしておく必要がありますが、実際の放射線治療はカプセルの薬を飲むだけです。放射線治療の良い点は全身麻酔や手術のような負担がないことです。必要であれば繰り返して行うことも可能です。入院しなくても外来でできる場合もあります。

逆に放射線治療の欠点は効果が出るまでに数ヶ月かかることと、治療後に甲状腺機能低下症に移行する人が年毎に増えてくることです。治療後1年目では53%の人が甲状腺機能亢進、9%の人が機能低下、残りの38%の人で甲状腺機能が正常でした。しかし、治療から3年たつと機能亢進は19%、機能低下は33%、機能正常が48%でした。治療後10年経過すると約半数の人が甲状腺機能低下症になるとの報告もあります。低下症になれば甲状腺ホルモン剤を終生続けることになります。ただし、低下症の治療は安全で簡単なものです。甲状腺ホルモン剤には副作用はまずありません。薬の量も何年も変わることはありませんので血液検査は年に1〜2回で大丈夫です。今のところ薬は3月分まとめて処方することができます。

放射線を使いますので妊娠中授乳中はこの治療を受けることはできませんし、この治療を受けた後1年間は妊娠できません。ただし1年を過ぎてからの妊娠なら赤ちゃんへの影響はありません。また、放射性ヨード治療の後でバセドウ病に伴う眼症状が増悪することがありますので、眼症状がある場合もこの治療は受けられません。しかし、髪の毛が抜けるとか癌ができるとかいった放射線特有の副作用の心配はありません。