内分泌疾患専門病院
甲状腺・副甲状腺疾患、糖尿病などの生活習慣病 Facebookページへ Twitterへ

第8章 糖尿病専門医の視点

これまで糖尿病に関することについて順を追って説明してきました。ここでは、少し視点を変えて糖尿病専門医が糖尿病の診療を行う際に患者さまのどんなところを注意して見ているか説明したいと思います。糖尿病と言ってもいろんな糖尿病があって、ひとりひとり少しずつ違うところがあります。最善の方法で血糖コントロールのお手伝いをするために、主治医は糖尿病の患者さまについて以下の点を知ろうとしています。

血糖コントロール

まず、現在の血糖コントロールの状況をみます。空腹時血糖、食後血糖やHbA1cが指標になります。極端な高血糖の場合は緊急に治療が必要かどうか判断します。すでに他の病院で薬物治療を受けている場合は低血糖の有無も注意します。

合併症と併発症

肥満、高血圧症、高脂血症は糖尿病とともに動脈硬化の危険因子ですので、これらの有無を確認します。動脈硬化によって起こる心疾患や脳梗塞の既往などを確認します。また、糖尿病の3大合併症について調べます。特に増殖性網膜症がある場合は急速な血糖コントロールは避けなければなりませんから、眼底検査は必ず行います。例えば肝臓病など他の持病がないかどうか、常用する薬はないかなども確認します。

インスリン分泌予備能

インスリンの働きが足りないために血糖値が高くなるのですが、膵臓にどれだけインスリンを作る力が残っているか(インスリン分泌予備能)をみます。血液中のインスリンやCペプチドの量、尿中のCペプチドの量で推測します。血糖値とインスリン分泌予備能によって薬物治療をどうするか考えます。最初はインスリン分泌予備能が低くても、治療によって血糖コントロールが良くなると予備能が回復してくる場合もあります。

インスリン抵抗性が増大したために血糖値が高くなっている場合にはインスリンやCペプチドがむしろ高い値をとります。このような場合は食事や運動によって体重をコントロールします。薬物治療が必要な時はインスリン抵抗性改善薬やビグアナイド薬を考慮します。

▲このページのトップへ

病型

1型糖尿病か2型糖尿病かの診断はGAD抗体の有無、他の自己免疫疾患の有無、インスリン分泌予備能などから下されます。1型糖尿病のほとんどの人はインスリン治療が必要になります。2型糖尿病ではまず生活習慣の見直しが必要です。薬物治療が必要な場合もそうでない場合もあります。

今までの治療歴

すでに他の病院で薬をもらっているなど治療歴がある場合は薬の内容や量を確認します。適切な薬物であればもちろん続けます。食事療法や運動療法がどの程度できていたか確認します。薬は続けているが食事療法には気をつけていない人がよくいます。このような場合は食事の見直しによって血糖コントロールが良くなり薬を減らせることがしばしばあります。

糖尿病に対する理解

初めて糖尿病と診断されたばかりの人は糖尿病について何もわからないでしょう。何年も前から糖尿病と診断されていても、糖尿病教室や本などで勉強したことがなければ、やはりわからないことがたくさんあるでしょう。糖尿病とうまく付き合っていくためには、糖尿病のことをある程度は知っておく必要があります。そこで主治医は糖尿病についてどの程度勉強したことがあるか、どの程度理解があるか知りたいと考えます。糖尿病について理解が深まれば血糖コントロールが良くなることが多いからです。

社会的な背景

糖尿病がひとりひとり異なるように生活環境や生活リズム、仕事、家族構成などもひとりひとり違います。食事は全部自分で作って食べる人もいますし全部外食の人もいます。仕事の都合で規則正しく食事が摂れない人もいます。糖尿病の食事療法、運動療法、薬物療法はひとりひとりの生活に合って、長続きできるものでなくてはなりません。これはプライバシーにも関わる問題ですが、適切なコントロールの方法を決めるために、生活環境や生活習慣にも少し踏み込ませていただきます。血液や尿の検査結果だけで適切なコントロールの方法が決まるわけではないのです。

▲このページのトップへ